JAB × HI-KING a.k.a. TAKASE

JAB × HI-KING a.k.a. TAKASE

"ACT LIKE YOU KNOW" を "知ったフリしろ" とはNIPPSもうまくいったもの。だが、このJABとHI-KING a.k.a. TAKASEのEPは、知ったフリして素通り...では決して許されない強力なコンボシット!そう、ここはやはり、KRS流に「ガキンチョMCども、オレらの前じゃわきまえとけよ」とでもこのタイトルを訳して聴くべきか。
大阪でありながら、大阪ではない...独特の空気を持つ「高槻」をレペゼンするJAB。動きの鈍い関西シーンで矢継ぎ早にソロやポッセで作品を連発し、いつのまにやら全国から注目を浴びる存在になり、先日も自身3作目となるソロアルバム『SESSION FILE』をリリース。対するHI-KING a.k.a. TAKASEは奈良をレペゼンしながら、ライブやフリースタイルバトルでの圧倒的な実力でもって関西を代表するトップランクのMCのひとり。また『SRサイタマノラッパー3 ロードサイドの逃亡者』での「NO VOICE」役を介し、銀幕の中でも見せつけたMCっぷりは、更なるプロップスを得るに十分なものだった。
そんなそれぞれの「地方」をレペゼンしながら関西HipHopシーンの話題の中心を担う二人。前述のJABの3rd『SESSION FILE』の収録曲のレコーディングを契機に高まったモチベーションは「仕事の早い」彼らを駆り立てた。そして一気呵成に今作を仕上げさせた...に違いない、そう容易に想像させるだけの瞬間の熱量がこの6曲プラスRemix3曲のリリックや掛け合い、フロウやビートの端々からあふれ出している。
スキルフルで自由にビートを乗りこなせるフロウと、ユーモアのある言葉遊びが際立つHI-KING a.k.a. TAKASEのラップが飛び回る空間に、決して器用ではないがオリジナルなフロウと、シリアスながら仲間やシーンへの愛情がにじみ出るJABのラップは、話題のヒッグス粒子のように音楽に質量を与えるかのよう。各々の「やるべきことをやる」スタイルがタイトに且つ、絶妙に入り組んだこのEP。「音楽」という見えないものをまるで物質化してしまうかのような...とは言い過ぎかもしれないが、それぞれの今現在の脂のノリっぷりを聴かせてくれるに違いない今EP。関西シーンの最も旬な一面を手っ取り早く体感したい輩はもちろん、ただただ良いHipHopを聴きたいと思っている諸氏にも、手軽にかつ繰り返し楽しめる一枚として自信をもってオススメしたい。
text by 飯原健(大阪HipHop teacher)