2011年の6月ぐらいに大規模なKAIKOOを開催しようと構想していたんです。2010年4月の〈KAIKOO POPWAVE FESTIVAL〉には2日間で1万2千人以上のお客さんが来てくれて、内容的にも手応えを感じて、さらに新たな挑戦をしようとやる気を出していたんです。そんな矢先、3月に地震と原発事故が起きた。なんとか6月の開催を実現させようと奔走したんですけど、さすがに大規模な野外フェスを東京近郊でやれるような状況じゃなかった。あの異常事態だから、それは仕方なかったと思うんです。ただ、震災のあと、自粛モードで東京のクラブやライヴハウスが軒並み営業できないような状態になっているのはなんとかしたかった。たしかに節電とか、いろんな事情があったけど、クラブやライヴハウスで音楽を楽しむ自由が制限されているような風潮はおかしいと感じて。社会は混乱しているし、政治は信用できない、誰を、何を信じていいかわからなくてみんなすごく不安だったと思う。だから、いまこそ、音楽でしょって。そういう思いを強く抱いたんです。先が見えない不安なときだから、自分の好きな音楽でテンションを上げて、気持ちを保つのが必要だと思った。僕は20歳ぐらいのときにイギリスに渡って、向こうで音楽の仕事を始めたんですけど、最初は英語もしゃべれないし、不安で孤独だった。そんなときに、クラブやライヴハウスに行って、音楽を通じてコミュニケーションを取って、友だちを作って、ずいぶん救われた。それは個人的な体験だけど、音楽は人が追い込まれたときに力になるものだと思う。そんな考えもあって、3月26日に急遽、渋谷のクラブの〈asia〉と共催で〈HOPE〉というチャリティー・イベントをやったんです。ALTZやYOGURTやHIKARUのDJ、BAKUといとうせいこうさんのセッション、KILLER-BONGやO.N.Oのライヴなんかがありました。出演者も気合いが入っていたし、すごい良いイベントでしたね。お客さんひとりひとりが思いっきり遊んでいる雰囲気があったし、人のパワーを感じた。やっぱりこういうときに音楽があるのは強いって改めて確信したんですよ。それで、大規模な野外フェスができなかったとしても、KAIKOOとして2011年中に何かをやろうと決心したんです。渋谷のクラブやライヴハウスの人たちに声をかけて、みんなでアイディアを出し合っていくうちに、渋谷で8会場同時開催の〈KAIKOO POPWAVE FESTIVAL 2011 & 2012〉のイメージが徐々に形作られていきました。同時開催というのは初めての試みだったけど、都市型音楽フェスにこだわり続けてきたKAIKOOらしい街に根ざした音楽フェスが実現できましたね。(談)

インタビュー/文・構成:二木信

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